ミュージックビデオやCMなどの映像を手掛ける映像クリエイターであれば、誰にも刺激や影響を受けた作品やクリエイター(映像監督)の存在があるのではないだろうか? そんな中で、圧倒的な表現力をもって歴史に名を刻む監督やビジュアリストたちのディレクターズカットDVDが「Directors Label:ディレクターズ・レーベル」というシリーズとして、監督別にリリースされている。
現在7名のベストセレクションがリリースされているが、いずれも監督自らが監修した豪華な作品集と、制作の舞台裏などを紹介した貴重な解説や、インタビュー、メイキング、ショートフィルム作品...などの特典映像で満載のセレクションDVDに仕上がっている。また、取材や貴重な資料写真を満載した52ページにおよぶ日本語のブックレット(小冊子)がついているのも嬉しい。
コンテンツの構成は監督によって異なっているものの、代表作品からだけではなく、ソウルフルなコメントやオフショトなどから「鬼才」の片鱗を垣間見ることができる刺激的な保存版DVDではないだろうか。
それでは個別に、概要を紹介しておこう...。

Vol.01
スパイク・ジョーンズ Best Selection
いくつもの賞を受賞したロックグループ「ソニックユース」のミュージックビデオを足掛かりとして、「R.E.M」「ビースティボーイズ」「ビューク」などのトップミュージシャンのミュージックビデオを次々と手掛け、特にミュージックビデオ市場においては、世界中で圧倒的な支持を得ているカリスマ的存在である。
その後1999年には、劇場公開映画の処女作となる「マルコヴィッチの穴」が世界的に注目され、2000年アカデミー賞においては、監督賞をはじめ数々の賞を受賞している。
巨匠フランシスコッポラの娘であるソフィア・コッポラと結婚したのも有名な話だ(2003年に離婚)。
■収録作品
ミュージックビデオからは、■ビースティ・ボーイズの「Sabotage」と「Sure Shot」、■ビョークの「It‘s Oh So Quiet」、■ウィーザーの「Buddy Holly」と「Undone (The Sweater Song)」、■ファットボーイ・スリムの「Praise You」と「Weapon Of Choice」、■ダフト・パンクの「Da Funk」、■ケミカル・ブラザーズの「Electrobank」、■ダイナソー Jr.の「Feel The Pain」、■ノトーリアスB.I.G.の「Sky’s The Limit」、■ファーサイドの「Drop」、■ワックスの「California」他、全17作品と、これだけでも十分に豪華なコレクションとなっている。
その他には、ショートフィルム作品やドキュメンタリー作品なども収録されており、特典映像として、ミュージックビデオの音声解説入りバージョンや、ミュージシャンへのインタビュー、メイキングなども収録されている2枚組のコレクションである。
価格は5,229円/品番:AEBW-10183/発売:アスミック

Vol.02
クリス・カニンガム Best Selection
1995年、25歳の時に、サンプリングを駆使したデジタルサウンドユニット“オウテカ”の「Second Bad Vilbel」で、初のミュージックビデオを手掛ける。
1997年には、「エイフェックス・ツイン の Come To Daddy」のミュージックビデオで、狂気的な短編映画(映画と呼びたくなる程に引き込まれる作品)の圧巻の映像表現で世界を驚愕させて以来、見る者の目を一時も離さずに引き込んでしまう独特な映像を描き続けている。(この作品は、MTVで放送禁止の経歴を持つ)
一方、「マドンナ の Frozen」や、「ビョーク の All Is Full Of Love」では、モノトーンな静寂と質の高いシュールな臨場空間をドラマティックに描き出している。「Frozen」の、モーションカメラを駆使した多重合成や、「All Is Full Of Love」のメカトロニック(ロボット)との合成など、それぞれの時代においてアイディアと独特な映像表現を描き出している。
世界の多くのミュージックビデオにも多大な影響を与えており、よく見渡してみると、日本国内のトップミュージシャンの作品でも、その影響が色濃く伺えるものもある。
また、「エイリアン3」や、スピルバーグ監督作品の「A.I.」などの劇場公開映画の特殊効果にも参加し、その卓越したテクニックと表現力を発揮している。「エイリアン3」の特殊効果を手掛けた時は19歳だったというから驚きである。
■収録作品
ミュージックビデオからは、■エイフェックス・ツインの「Come To Daddy」と「Windowlicker」、■ビョークの「All Is Full Of Love」、■マドンナの「Frozen」、■ポーティスヘッドの「Only You」、■オウテカの「Second Bad Vilbel」、■レフトフィールド+アフリカ・バンバータの「Afrika Shox」、■スクエアプッシャーの「Come On My Selector」、の全8作品。
ビョークのメイキングビデオなどは、彼女自身の映像表現へのこだわりと、クリス・カニンガムのビジュアライゼーションの一端を垣間見ることができるものになっている。
その他、2本の短篇映画作品や、テレビコマーシャル(プレイステーションや日産なども含まれている)などが収録されている。
価格は5,229円/品番:AEBW-10185/発売:アスミック

Vol.03
ミシェル・ゴンドリー Best Selection
ミシェル・ゴンドリーは、実にユニークなアイディア満載の映像演出で、ミュージックビデオを手がける他の映像監督からも羨望の注目を集める存在だ。彼が手掛けている作品は実に多く、近年最も多忙な映像作家という紹介記事も方々で見かけられる。
先に紹介した、スパイク・ジョーンズやクリス・カニンガムも、魂の叫びで聴く者の心を串刺しにする歌姫「ビョーク」の作品(ミュージックビデオ)を手掛けているが、ビョークがミシェルに寄せる信頼は厚く、ビョークの作品を5本も手掛けている。
ビョークのコメントによると、たまたまMTVで流れていたミシェルの作品を見た彼女が、そのセンスに驚き、1993年のアルバム『デビュー』からのシングルカット曲『ヒューマン・ビベイヴィアー』に映像を付けたことが2人の深い縁の始まりだったという。音楽と映像、その表現領域は違っても、表現するということに妥協のない世界観をもっているアーティストのソウルが共鳴したに他ならない。
また、ミュージックビデオの他にも、GAP、 NIKE、アディダス、リーバイス、スミノフ... など、数々の賞に輝くTVCMも手掛けている。
ユニークな映画仕立てのものから、スケール感豊かな空撮を全面に押し出したダイナミックな作品まで、その表現手法は実に多彩だ。
■収録作品
ミュージックビデオからは、■ベックの「Deadweight」、■ビョークの「Army Of Me」「Hyperballad」「Isobel」「Joga」、■ケミカル・ブラザーズの「Let Forever Be」「Star Guitar」、■チボ・マットの「Sugar Water」、■ダフト・パンクの「Around The World」、■マッシヴ・アタックの「Protection」、■カイリー・ミノーグの「Come Into My World」、■ローリング・ストーンズの「Like A Rolling Stone」、■ホワイト・ストライプスの「Fell In Love With A Girl」他、26作品。
その他、ショートフィルム作品や、リーヴァイス、スミノフ、ポラロイドなどのTVCM、インタビューやメイキングを収録したドキュメンタリーなどが収録されている2枚組だ。
価格は5,229円/品番:AEBW-10184/発売:アスミック

Vol.04
マーク・ロマネック Best Selection
これまでに手掛けてきた数多くのミュージックビデオ作品において20以上もの「MTVアワード」を受賞し、97年には、プロモーションビデオ監督としては初めての特別表彰を受けるという輝かしい受賞歴の持ち主だ。
近年では、2004年のMTVアワードでも監督賞を受賞するなど、ミュージックビデオ市場においては最も名前が轟いている存在として、注目を集めている。
さながら写真家が切り出した1シーンのように完成度の高い構図やトーンは、どれをとっても圧倒的な引力をもっており、彼の作品に係わったすべてのアーティストやスタッフたちが完璧主義者であると湛えている。
『幾重にも解釈できるビデオをつくりたい。すぐに内容がわかるものはダメ。無意識のレベルで観て右脳で感じるのが理想だ。パズルの断片を散りばめ、謎を残し、夢のように描く。シーンに伏線を張り、さらに別のストーリーが広がるイメージを注入する。何度観ても飽きない作品を目指している』と、インタビューの中で熱く語る。
2002年には、ロビン・ウイリアムス主演の劇場公開映画「ストーカー」も手掛けており、現在は、新作映画に取り組んでいるという。
■収録作品
ミュージックビデオからは、■ジェイ・Zの「99 Problems/ディレクターズカット版」、■ジャネット・ジャクソンの「Got ’Til It’s Gone」、■ベックの「Devil’s Haircut」、■ウィーザーの「El Scorcho/ディレクターズカット版」、■ソニック・ユースの「Little Trouble Girl」、■マイケル & ジャネット・ジャクソンの「Scream/ディレクターズカット版」、■マドンナの「Bedtime Story」と「Rain」、■フィオナ・アップルの「Criminal」、■R.E.M.の「Strange Currencies」、 ■ナイン・インチ・ネイルズの「Closer/ディレクターズカット版」と「Perfect Drug」、■レニー・クラヴィッツの「Are You Gonna Go My Way」、■レッド・ホット・チリ・ペッパーズの「Can't Stop」、■デイヴィッド・ボウイの「Jump, They Say」 他。
その他ドキュメンタリーや、彼自身や、彼の作品に係わったアーティストやスタッフたちのインタビューが特典映像として収録されている。
価格は5,040円/品番:ACBW-10305/発売:アスミック

Vol.05
ジョナサン・グレイザー Best Selection
先に紹介した顔ぶれに比べると、ミュージックビデオにおいては、それほど数多くを手掛けてはいないが、ソウルファンクをベースとしながらダイナミックなサンプリングサウンドを突き進む、あの「ジャミロクワイ」やヒップホップユニット「U.N.K.L.E.」のミュージックビデオは、世界中で大きな注目を集めた。
また、ギネスのCM「Surfer」は、イギリスのTV番組で「史上最高のコマーシャル」という称賛に選出されている。多くの映像作家がそうであるように、彼もまた、現在では長編映画に積極的なアプローチを見せているが、2004年11月に公開されたニコール・キッドマン主演の劇場公開映画「Birth」では、観客や映画関係者から賛否両論を呼び、興行成績は散々な結果だったようだ。
■収録作品
ミュージックビデオからは、■レディオヘッドの「Street Spirit」、■ジャミロクワイの「Virtual Insanity」、■リチャード・アシュクロフトの「A Song for the Lovers」、■ニック・ケイヴ & ザ・バッド・シーズの「Into Your Arms」、■ブラーの「The Universal」、■U.N.K.L.E.の「Rabbit in Your Headlights」、■レディオヘッドの「Karma Police」、■マッシヴ・アタックの「Karmacoma」。
その他、ラングラー、ギネス(ロングバージョン)、バークレイズ、フォルクスワーゲン、ステラ・アルトワ、リーバイスなどのTVCM作品や、劇場公開映画「Sexy Beast」と「Birth」からの抜粋映像と、数々のインタビューが収録されている。
価格は5,040円/品番:ACBW-10305/発売:アスミック

Vol.06
アントン・コービン Best Selection
Bono率いるアイルランド出身のロックバンド「U2」(近年ではアップルのiPod U2 Special Editionでもお馴染み)や、ニルヴァーナを手掛けたカメラマン&映像作家としてあまりに有名な彼だが、特に「U2」を20年以上にわたって撮り続けた写真家としても、その足跡や功績に高い称賛の声が溢れている。ある意味「U2」の育ての親でもある。
写真家としても彼の才能は、映像監督としても澱むことなく発揮されており、コントラストが強調されたセピア風の独特のタッチが特徴的な彼の写真の表現手法は、その後手掛けた数々のミュージックビデオにも受け継がれている。中でも、「ニルヴァーナ の Heart-Shaped Box」は、90年代を代表する傑作と言われている。
■収録作品
ミュージックビデオからは、■U2の「Electrical Storm」と「One」、■ニルヴァーナの「Heart-Shaped Box」、■ジョニ・ミッチェル & ピーター・ガブリエルの「My Secret Place」、■ニック・ケイヴ & ザ・バッド・シーズの「Straight to You」、■ジョイ・ディヴィジョンの「Atmosphere」、■メタリカの「Hero of the Day」」、■マーキュリー・レヴの「Opus 40」と「Goddess on a Highway」、■デペッシュ・モードの「Barrel of a Gun」と「Walking in My Shoes」、■エコー & ザ・バニーメンの「Seven Seas」と「The Game」他。
その他は、ショートフィルム作品や、MTVのTVCM、特典映像としては、U2の「Electrical Storm」のメイキングや、手掛けたミュージシャンたちへのインタビューなどが収録されている。
価格は5,040円/品番:ACBW-10307/発売:アスミック

Vol.07
ステファン・セドゥナウィ Best Selection
もともと、ファッション系の写真家として世に出た彼だが、その後、「U2」「R.E.M.」などのメジャーなミュージックビデオ作品で、映像監督としても広く知られるようになった。
ミシェル・ゴンドリーと並び「ビョーク」との親交も深く、ミュージックビデオ作品やコンサート映像の撮影等においてのコラボレーションは評価が高く、3作品を手掛けている。
特に「Big Time Sensuality」のミュージックビデオでは、ニューヨークの街の中を走り抜けるトラックの荷台の上で唄うビョークのクローズアップのワンメイク映像で構成されているシンプルな構成だが、ビョークの情感豊かな表情が、単調さを感じさせないものとして絶妙に仕上がっている。
彼たちの出会いは、ステファンが彼女の曲を聴いて、「なんという驚くべき芸術家なんだ」と感銘を受け、自らアプローチをとったのがきっかけだったという。
また、その他に手掛けたミュージックビデオの数も実に多く、過去15年間で約70本もの作品を世に送り出している。
■収録作品
ミュージックビデオとしては、■U2の「Discotheque」と「Mysterious Ways」、■R.E.M.の「Lotus」、■レッド・ホット・チリ・ペッパーズの「Give It Away」と「Scar Tissue」、■ビョークの「Big Time Sensuality」と「Possibly Maybe」と「Big Time Sensuality」、■アラニス・モリセットの「Ironic」、■マッシヴ・アタックの「Sly」、■ネナ・チェリー & ユッスー・ンドゥールの「7 Sconds」、■ザ・ブラック・クロウズの「Sometimes Salvation」、■ガービッジの「Queer」、■トリッキーの「For Real」と「Pumpkin」と「Hell is Around the Corner」他、全19作品。
その他では、DVD限定新作ショートフィルム、DVD限定新作アニメーションをはじめとする短編作品やTVCM、そして、特典映像としては、ニューヨーク大学でのプレゼンテーション映像、音声解説付きメイキング、本人やアーティストたちのインタビューなどが収録されている。
価格は5,040円/品番:ACBW-10308/発売:アスミック
| special thanks to Miramax Films |
製作費7億円、ロケ地200ヶ所、撮影フィルム2000時間という膨大なスケールで世界を圧巻した、あの壮大な海のドキュメンタリー作品『ディープ・ブルー』が52分のメイキング映像や作品解説書が付いたDVDスペシャルエディションとしてリリースされている。
海底5000メートルの科学者でさえ見たことのない世界や、体長30メートル200トンの世界最大の生物クジラの旅をはじめとする、誰も目にしたことのない世界が、「アラステア・フォーギル」と、「アンディ・バイヤット」という2人の監督により映像遺産として残された。
もともとはBBSの番組としてつくられた作品だが、そのカメラワークには圧倒されるものがある。デジタル映像が氾濫する中、「映像が伝えることとは? 感動とは?」そんな感性回帰の部分をじっくりと見つめてみるのもいいのではないだろうか? クリエイターのアーカイブとしてはお勧めの作品である。
もうひとつ、大自然と向きあったドキュメンタリー作品を紹介しておきたい。
撮影時間4年、製作費20億円、世界40カ所の100種類を越える渡り鳥の旅を描いた作品『WATARIDORI』の、CGと見まがってしまうほどのカメラワークにも心が釘付けになってしまう引力がある。
世界中で、「あのシーンはCGでつくられた」というデマが飛び交ったほどの奇跡的な映像を描き出したのは、「ニュー・シネマ・パラダイス」の名優「ジャック・ペラン」である。
特殊超軽量飛行機で鳥の群れと一緒に飛びながら撮影された鳥たちの編隊飛行シーンの、羽音まで聞こえてくる臨場感は圧巻だ。必ずやクリエイターの感性を刺激する一枚になることだろう。