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HOMEバックナンバーvol.1映画予告編制作という仕事
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映像の仕事 | 映画予告編制作という仕事 | 短い時間の中に、映画のすべてを注ぎ込むクリエイター達の仕事を紹介。

Work of Movie Trailer

 映画の予告編。かつて劇場やテレビのCMでしか目にすることができなかったこの宣伝用のコンテンツは、インターネットを始めとするデジタルメディアの普及により、今ではさまざまなシーンでいつでも好きな時に見ることができる。また、劇場公開が終わり、ほどなく発売されるセルDVDを手にすると、そこにも当たり前のように特典映像として収められている。視点を変えれば、この劇場動員を計るための宣伝素材は、ミュージッククリップなどと同じ次元で、新たなエンターテイメントコンテンツとして、多くの人々に受け入れられている。

 そこで今回は、CMという短い時間の中に、映画のすべてを注ぎ込むクリエイター達の仕事を紹介しよう。舞台は、アナログとデジタルが交差する独特のワークフローで、7割以上のシェアを誇る予告編制作会社「ガル・エンタープライズ」だ。


映画の予告を1980年あたりで区切ってみよう

 日本国内では、映画の予告編を専門的に制作している会社は数少ない。その中でも最も古い歴史をもつのが「ガル・エンタープライズ」で、銀座からわずかに外れた下町の雰囲気が漂う中央区の入船にある。創業は1976年で、日本で公開されている映画の7割を超える予告編制作を手がけている。

 そもそも、「映画の予告編」というものが、それを専門的に制作しているプロダクションによって作られているということがあまり知られていない。多くの方々が、配給会社が制作し、映画本編と共に供給されていると思っているのではないだろうか。しかし、一部を除いて、そのほとんどは予告編を専門に作成しているプロダクションによって生みだされているのだ。
 「アメリカでは、古くから、そんな制作会社がひしめき合っていますが、もともと日本にはなかったジャンルなんですよね」
ガル・エンタープライズの取締役制作部長、板垣恵一氏は語る。現在、予告編制作を専門としているプロダクションは、「ガル・エンタープライズ」のほかに、5〜6社ほどしか存在していない。

 「もともと日本映画の予告編の制作は、演出、編集のチーフになるための登竜門であったという。しかし、この行程には問題もあった。現場に携わっている人々には、当然、台本と撮れた画が頭にある。その結果ストーリーラインに沿ったカットが並ぶ予告編となり、コマーシャル的な要素が低くなる。凄くインパクトがあるカットでも、"本編に関係ない"とか"本編にはこういう使い方をしていないからダメ"と監督のNGをうけることも多かった。現に本編の編集もするようになった今、自分の予告は作れないと思う。」と当時を振り返って、板垣氏は語る。

 こうした問題を解決するために「日本の市場でも通用するような予告編を作り直そう」と立ち上がったのが現ガル・エンタープライズの社長でもある佐藤宣明氏であり、予告編を作り続けて四半世紀のキャリアと実績を持つベテラン演出家である板垣氏が、その内堀を固めてきたことで、「映画の予告編といえばガル」というステータスが築かれてきた。



オールラウンドに作業をこなす予告編制作者

 「打ち合わせから、本編見て、構成して、ラフを作って、書体選んで、ナレーター選んで、どういうセリフにしようか考えて…。ナレーションまで手がけると、下手すればコピーラインまで考える場合がありますね」

 予告編制作のワークエリアについて、カル・エンタープライズの演出を担当する小江英幸氏がこう説明してくれた。小江氏は予告編を作って18年目になるという大ベテランだ。

 小江氏によると、ガル・エンタープライズでは、1人の演出家が1つの作品を担当し、漠然と映像制作だけを手がけるだけではなく、映像制作をトータルでコーディネートする能力が必要だという。宣伝プロデューサーを筆頭に、監督や撮影部スタッフの意見を取り入れつつ、録音部、効果音部、音楽家、ナレーター、ネガ編集、アニメーター、コピーライター、CGクリエイターなどの、多くのスタッフたちとワークフローを組み、予告編を完成させていく。

 「私たちはラフ組みまでの多数の作業を大半は一人でやるので、CM業界のように、プランナーさんがいて、クリエイティブディレクターがいて…などといった分業化されたシステムとはちょっと違いますよね」と小江氏が説明してくれたが、こうしてみてみると、予告編も1つのショート映画を制作するような感覚であることが分かる。

 小江氏によると、「1人で制作を担当できるのは、一年間で平均は17から20タイトルぐらい。最大で25作品が限界」とのこと。1作品が長くても数分という予告編の制作で、このような本数は少ないと思うかもしれないが、この数にはわけがある。

 映画の予告編には、「特報1」「特報2」「予告編(公開前)」「予告編2(公開中)」のように、大きい作品になればなるほど多数のバージョンを制作しなければならないからだ。足しげく、劇場に通い詰める映画好きの方だったら、公開3ヶ月前、2ヶ月前、一ヵ月前…、公開前に近くなるほど、予告編の中身が充実していく様子に気づいたことがあるのではないか。

 また、劇場用だけではなく、テレビ用のCMも、15秒、30秒、60秒といった尺と、それぞれに対する多数のバージョン、更に劇場公開後の「公開中」といったバージョンも作成しなくてはならない。更に、大きな作品になると、天気予報のバックに流れるフィラーや、プロモーション用のメイキング的なものもある。しかも、ワークエリアは映像だけにとどまらず、ラジオで放送するための「ラジオスポット」や、電話などで流れる「音だけの予告編」までをも、担当することがあるというから驚きだ。


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