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HOMEバックナンバーvol.5CMに出演したダチョウたちのTruth Story
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3羽になって作業量は3倍以上に膨れ上がった
STEP-1[スキー場の撮影]

 「TRIPLE JUMP篇」の実作業は、スキー場の滑走シーンの撮影から始まったわけだが、CMの公開がスキーシーズンに入る冬であるために、撮影時期が夏になってしまった。当然ながら、日本ではこの季節にスキーを滑れるところはなく、撮影場所の選択肢は海外ということになった。
 もちろん、ワールドワイドで見ると、その時期にスキーが可能な地域はいくつかあったものの、まずはできる限り日本のスキー場のイメージに近い場所にしたいという思惑もあったため、南半球のニュージーランドの中からいくつか候補があがり、後は実際にロケハンで回ってみて決めることになった。

 しかし、選定条件はスキー場の景観だけではなく、実際に着ぐるみを着て滑ってもらう実演者(スキーヤー)のリハーサル滑走や、本番の撮影で滑るコース、カメラ位置、カメラアングルなどを決めていくという作業もあったため、ダチョウの着ぐるみを持ち込んでのロケハンになったという。

 結局、ロケ地に選ばれたのはニュージーランドのクイーンズタウンにあるカードローナスキー場で、ロケは1週間に及んだ。
実際の滑走シーンの撮影では、その多くのシーンをカメラマンがカメラを抱えて追走するというアプローチで撮らなくてはならなかったために、現地でスペシャリストが起用されることになった。
撮影に使用されたカメラは、35mmだと重くて取り回しができないということから、今回の撮影では16mmのフィルムが回された。
フィルムが何フィート回ったかは聞けなかったが、3羽(人)のグループライディングを思い通りに収めるのは並大抵のことではなく、更にそこには天候不良に左右されるという悪条件も重なり、撮影はなかなか厳しいものだったという。



STEP-2[実物のダチョウ撮影]

 スキー場での撮影も大変だったが、帰国後に待ち受けていた実物のダチョウの撮影は、もっと大変だったようだ。
撮影は、都内のスタジオにて全てクロマキー(グリーンバック)で行われたが、ニュージーランドで撮影された着ぐるみの滑走シーンのOKカットが、全てのベースとなるため、それを参照しながら、合成用のクビから上の部分を撮影していくのは、とてつもなく大変な作業であったという。
 それもそのはず、体長が2メートルほどもあるダチョウをスタジオに入れて、クビの向きや角度を、撮影された素材の各カットに合わせながら撮影するという作業が、とてもスムーズに行くとは思えない。しかも、調教されたタレント資質いっぱいの犬や猿ならまだしも、ダチョウである。きっと途方もない作業だったのではないだろうか。

プロデューサーの根本氏はその時の苦労を次のように語る。
 「それはもう言えないぐらいに凄く大変な作業でしたね。前作の時も大変は大変だったのですが、今思えばよくいうことを聞いてくれました。でも、今回のダチョウたちは、実に頑固者というか、いうことを聞いてくれないものが多くて本当に苦労しました。相手は動物なので、決して無理はさせられませんでしたので、こまめに休ませながら、疲れないように気を遣い、ご機嫌をとりながら協力してもらいました(笑)」(根本氏)。

 延べで撮影しなくてはならないカット数も前作に比べて3倍に膨れ上がっているわけだが、相手が動物ということになれば、その手間はきっと4倍にも5倍にも膨れ上がったのではないだろうか。こんなダチョウとの格闘が、なんと1週間にも及んだというから、その大変さは体験していない我々には計り知れないものがある。
ちなみに、前作のダチョウが登場しているのかといったあたりも気になるところなので、根本氏に聞いてみた。
 「前作に登場してもらったダチョウは今回登場していません。今回は3羽分のカットを撮影しなくてはならなかったということもあり、カット数がものすごく増えることが見えていました。そこで、とても1羽では対応できないと考えて、3羽のダチョウに来てもらったのですが、これは、それぞれが個々の役を演じるというのではなく、疲れないようにローテーションしながら撮影することを考えたためです。
そこで、どのダチョウがどの役にまわってもいいように、ルックスが似ているダチョウを揃えなくてはなりませんでしたので、前回のダチョウに似たのを探しだすよりも、新たに似ているものを探す方が容易だったからです」
と根本氏。



STEP-3[CGワーク]

 ダチョウたちのクロマキー撮影の次は、CG制作だ。
先にも紹介したように、今回の作品では、スキー場で撮影した着ぐるみスキーヤーの滑走シーンに合成するためのダチョウの足部分の制作が全てCGで行われたわけだが、前作のCG制作より「アイデンティファイ」と「オムニバス・ジャパン」の2つの合同チームで分業されるシフトが組まれた。

 ダチョウが3羽になることで、作業量はそれ以上に増えるという予測のもとにスタートしたCGワークだったが、実作業が始まってみると、それは予測を越えて、とてつもない作業量になったという。
1羽のときは、「ダチョウと背景の関係」だけで絵づくりが完結していたが、今回の「TRIPLE JUMP篇」では、ダチョウ同士の重なりが作業の難易度をずいぶんと大きくすることになってしまった。

 また、着ぐるみには、人間が足を通すための穴が空いているのだが、ジャンプなどシーンでローアングルから狙ったカットでは、その部分が見えてしまうために、そんな部分もCGで描き足して補完しなくてはならなかった。
また、クビの細いダチョウに対して、着ぐるみを着ている人間の胴体が大きいために、角度によっては着ぐるみのシッポの部分が人間の体の陰になって隠れてしまうカットもあり、そんな部分も、1つひとつ作り込まなくてはならなかったという。
3羽になったことで、発生してしまった手間は予想を超えたものがあったようだ。

 2つのCGプロダクションは、カットごとに分担して完結型のフローで作業をすることになったが、両社ともに、Avid Technology社の「SOFTIMAGE XSI」という同じソフトウェアをベースにすることで、ディテールやトーンなどのコンセンサスがとられ、必要なデータや情報が共有されたグループワーク環境の中で作業が進められていった。
 実際の作業としては、実写で撮影された着ぐるみの滑走シーンに対し、CGの足を追従させながら、角度やアングルといったものを作り込んでいかなくてはならないため、スキー場で撮影されたシーンから、着ぐるみダチョウの動きのデータを抽出する「モーショントラッキング」の作業が、「オムニバス・ジャパン」で一括して行われ、その情報をベースにして、カットごとに足のパーツや、細部の修正作業が作り込まれていった。
 もちろん、進行に応じて監督の田中氏の厳格なチェックが入り、更に細かな希望や指示がそこに反映されていきながら、調整と追い込みが繰り返されていったわけだが、監督自らがCGデザイナーであったことも、分業化のワークフローの中では、大きな救いになったのではないだろうか。

 CGで合成用のパーツを作り込むのと同時に、スキー場で撮影された実写素材にも膨大な加工が必要となる。

CGで作成した「ダチョウの足」やクロマキー撮影した「実物のダチョウの頭」などを合成するためには、ベースとなるスキー場の撮影素材から、不要な部分を消しておかなくてはならない。
 つまり、実写カットの中から、「着ぐるみのダチョウの胴体部分」と、足先の「スキー板の部分」、そして「背景」を残し、着ぐるみを着ている「人間部分」のみを全てのカットから消し込んでいかなくてはならないことになるわけだが、この作業も地味な作業ながら、非常に時間のかかる作業である。
CGと違って1フレームずつ、膨大な時間をかけて、手作業で消していく作業は、時間との戦いでもあり、まさに職人の世界観である。

 仮に全てのカットが合成だとすると(今回の作品はほぼそんな感じであるが)、30秒バージョンだと900枚にも及ぶクリップに対して一枚一枚、緻密な消し込み作業をしなくてはならないことになる。多くの合成作業で、このような地味な作業が、作品の完成度を支えているものである。
 特に今回のように動きが速いシーンでは、不均一なモーションブラー(ぶれた輪郭)の影響で、残したい部分の輪郭がハッキリしていないことが多く、より緻密な作業が必要だったのではないかと推測される。
この作業は、「オムニバス・ジャパン」のスタジオで、discreet社の「inferno」を使って行われた。

 また、消し込みの終わった実写素材と、CG素材、そしてクロマキーで撮影した実写のダチョウ素材の合成作業も、ここで行われた。描く素材を違和感なくなじませていく緻密な作業が、このマスターワークにかかっているが、今回の作業では、こうしたデジタルワーク(CGも含んで)が、延べで1カ月程もかかったというから、その作業量がとんでもないボリュームであったことがうかがえる。
わずか15秒や30秒のシーンは、このように膨大な時間が費やされて描き出されている。


 さて、華麗にゲレンデを舞うダチョウたちのバックグラウンドを紹介してきたが、CG合成のプロジェクトに参加したことがある方であれば、きっとこの記事を読んで「技術的なアプローチは、決して特別な手法が導入されているわけではない」と思っているかもしれない。
確かに、実写とCGの合成ワークフローにおいては、どんな作品であっても、基本的なワークフローは同じような手順で進められているものだ。
 しかし、そこには「独自の発想」「独自の技術」「独自のアプローチ」という部分が大きく影響しているからこそ、同じソフトウェア、同じ作業工程を経ても、描き出されてくる作品がさまざまなのではないだろうか?
それは、日常のワークの中で、皆さんも十分に感じているところであると思う。

 また、このような大掛かりなプロジェクトでは、実に多くのスタッフがかかわっており、そんな一人一人の表現する力が結集されて作品が描き出されていくのは言うまでもない。この「JAPAN SNOW PROJECT/TRIPLE JUMP篇」のプロジェクトでも、海外スタッフやエキストラ含めて100人前後という多くのスタッフたちが携わっている。
多くの心を釘付けにしたあのシーンは、そんな集大成により誕生しているのだ。
 ダチョウシリーズに、第3弾があるのかどうかは誰にもわからないが、彼たちの描き出す世界が今後も市場を湧かせていくことは間違いないだろう。近いい将来、また、彼たちの衝撃的な作品に出会えることを期待しよう。

最後に、この場を借りて、非常にお忙しい中、私たちのために惜しみない協力をくださったTUGBOATの多田 琢氏、フレイムグラフィックスの田中 秀幸氏、東北新社の根本一也氏、そして関係各社の皆さまに、心からお礼を申し上げます。

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