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Vol.6 | 2005.07.31 | depth of field
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FOCUS/スポット企画
[特集] 世界の注目を集めるジャパニメーションの現場-03 | アニメ業界の現状と問題点に取り組む集団 | 非営利団体「デジタルアニメ制作技術研究会」の活動
dof editorial team 取材2005.05.24

デジタルアニメ制作技術研究会

 映像や音楽やグラフィックを始めとする多くのクリエイティブワークがデジタル化の波に呑み込まれ、その制作手法や環境を大きく変えている。今となっては、デスクトップのパソコンで映画が作られる時代である。
もちろん、「表現」という世界観においては、豊かな環境になったと語られがちなこのデジタルワールドが必ずしも豊かだとは言い切れず、アナログにこだわる世界観も確実にあるが、少なくとも制作工程において大幅な簡素化や効率化を生み出していることは否定できないだろう。
そんな時代背景の中で、グラフィック業界でも、映像業界でも、音楽業界でも、多くの企業がより高いクオリティ(画質や音質といった側面)や効率化を求めてデジタル化の方向に車線変更を行なってきた。
今回レンズを向けたアニメ業界も、「セルと絵の具」という昔ながらの手法から「パソコン環境」という最先端の環境に一気に制作環境をシフトしたわけだが、変革により変わった環境が大きければ大きいほどに、そこには新たな問題もでてくるものである。
分業化のワークスタイルが根付いているアニメ業界においては、組織の枠を越えて多くのアニメーターやスタッフたちが作業を共有しているために、この環境変化への適応は決してスムーズだったとは言えないようだ。

 さて、ここではそんなアニメ業界の問題点に焦点をあててみよう。
アニメ業界では、こうした問題点に各社スタジオが連携して解決しようという動きがあり、その引率役になっているのが、2002年4月に設立された非営利団体「デジタルアニメ制作技術研究会」という組織である。
問題を抱えているのであれば、それぞれのプロジェクトや取り引き先同士だけで解決すればいいように思えるが、なぜ多くのスタジオ同士が手をとりあって問題の定義や解決に取り組んだのだろうか?

アニメスタジオには共通の悩みがあった

 近年、日本の「輸出産業」とまで称えられているアニメ産業が、実は東京集中型の産業であることをご存じだろうか? 東京都の調べによると、日本全国に約430社のアニメスタジオの存在が確認されているが、その約85%の360社ほどが東京都内に集中している。
いろいろな業界を見回してみると、アニメに限らず、エンターテイメント系コンテンツの制作や商業的な発信源が東京に集中してしまうのは、狭い島国である日本の市場構造の都合上仕方のない傾向なので、とりたてて書くほどのものではない。しかし、アニメ業界においては、東京にある約360社のうちの150社というボリュームが杉並区と練馬区に集中するという集落的な特徴が強い部分に独特の世界観があるようだ。
 これは、アニメ制作という業界が、大手制作会社などを中心に、プロダクション同士や下請けスタジオや撮影所などとの協業的な分業化の中で、常に密接なコミュニケーションをとりながら1つの作品を生み出してきたという背景に起因しているという。アングルを変えれば、中心となる企業や組織を取り巻くように分布してきたという方が明瞭な解説になっているかもしれない。集落ができあがっていけばフリーのアニメーターたちもそこに集まってくることになる。

特定非営利活動法人コミュニティー・サポーターズ 理事長の宮 徹氏
特定非営利活動法人コミュニティー・サポーターズ 理事長の宮 徹氏

 そんな中で「特定非営利活動法人(NPO)コミュニティー・サポーターズ」にて理事長をつとめる宮 徹氏が、東京都からの要請で、2000年から2001年にかけて「都内のアニメスタジオの数・分布:運営形態…」などの調査を行なうこととなった。
その一貫で40社ほどのスタジオに現場の話を聞いてみたところ、それぞれのスタジオが多くの問題点を抱えていることと、その問題点を招いている要因に1つの共通点があることが浮き彫りになってきた。
その共通点とは、セルや絵の具を使って行われていた典型的なアナログの制作工程の中に、パソコンやソフトウェアを多用したまったく新しい環境が急速に混在してきたことにより、これまで暗黙の了解のように保たれていた「標準化」の部分に認識のズレや歪みが生じていたという部分だった。



コミュニケーションとコンセンサスの狭間

 この問題の根元は1995年頃までさかのぼる。このころを境にアニメ制作は「特集#2/アニメワークを支える制作環境」で紹介した「RETAS!PRO」シリーズなどのソフトウェアを使ったデジタルワークに急速に移行しはじめる。あのスタジオジブリにCG室ができたのもこの頃(1996年)のことで、3D CGなども積極的に取り入れていく動きも出始め、アニメ業界は一気にデジタル化に呑み込まれていった。
古くからアニメ業界に携わる方に聞くと、この業界を呑み込んだ変革のスピードの速さは、デジタルのツールが登場したという要因だけではなく、国内唯一のセルメーカーであった「富士フイルム」がセルの生産を中止するという背景もあり、そんな時代の変化に追従するしか選択肢がなかったという。
そんな中で、急激な環境変化のスピードに追い立てられ、各社が独自にやりやすい環境を模索してきた結果、それまで当たり前のようにコンセンサスがとれていたところに、認識や解釈の違いが生じていった。
 冒頭でも触れたように、アニメ業界ではスタジオ同士が協業で相互に仕事を投げ合い、分業化のフローで1つの作品を作り上げているスタイルが一般的だ。制作工程そのものが細く分業化されているアニメ業界独特のワークスタイルを俯瞰から見ると、一つの作品を分業したスタジオ同士のコンセンサスだけではなく、社内の各工程やそこに携わる数多くのアニメーターや外部のエキストラスタッフたちを貫いてコンセンサスがとれていないと仕事がスムーズに進まないことになる。

 今回の特集記事「#1/#2」の中で、『アニメ業界ではデジタル化された昨今でも、各工程の名称を古い慣習により以前のままの呼び方で呼んでいる』と紹介したのを覚えているだろうか?
例えば、完成した絵や背景をレイヤー合成してカメラワーク(キーフレームアニメーション)をつけていく作業のことを映像やCGなどの業界では「合成:コンポジティング」と呼んでいるわけだが、アニメ業界では実際にセル画をカメラで撮影していた時代の慣習で今も尚「撮影」と呼んでいる。このようにアニメ業界の古い慣習とデジタルワークとの間には多くの解釈の違いもある。
 もし、プロジェクト内に、そんなアニメ業界の歴史的背景を認識していないデジタル時代の新人が携われば、「このデータを撮影に回して」という指示を受けて外部の撮影スタジオに走ってしまうかもしれない。
もちろん、これは1つの比喩的な例であって、実際の現場では当然ながら「この業界ではこうなんだ!」という教育がなされており、そんなつまらないミスが発生することはないだろうが、アナログ時代を生きてきたベテランのアニメーターとデジタル世代のアニメーターが共存する現状の中で、新たな共通語を成立させるにはそれなりの苦労があったのではないだろうか?
 また、完全なる分業化が確立されていたセル時代とは異なり、デジタルワークのフローでは、なまじパソコン上で何でもかんでもができるようになると、工程に準じて明確に作業を分業していたはずの各社・各パート・各スタッフが、個々によかれと思い創意工夫してしまうことにより、分業化された職域を犯してしまうような混乱や行き違いなども起きていったという。

プロダクション I.Gの演出家、高木真司氏
プロダクション I.Gの演出家、高木真司氏

 「デジタル化になって本当に作り方が自由になりましたので、一人で全部やろうと思っても不可能ではありません。3D CGパートの人が背景の作業をやったり、背景の作業の人がコンポジティングを始めたり、考え方ややり方次第でいろんな方法があります。
でも、以前では背景を描いている人が撮影をやることなんてありえませんでした。だって、筆で絵を書いている人がカメラを扱うことなんてできませんからね。仮にやろうと思ったとしても、まったく異なった技職人の世界ですから何年も修業しないと触らせてすらもらえません。
しかし、コンピューターになると、違った工程であっても基本的には同じコンピューターを使ってやっているわけで、そうなると普段使っていないソフトウェアを使うとすれば、そこに多少の習熟機関は必要にはなりますが、できない話ではありません。それにデジタルの工程ではいろんなやり方が可能なだけに、そういったところに職域やワークフローの変化も生まれます」
とプロダクション I.Gの演出家、高木真司氏は語る。

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